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- 2018.06.29
- 美味しいこだわり
夏の北海道は大自然の景色やアウトドアを思う存分楽しめる絶好の季節ですが、夏は美味しい旬の食材が豊富な季節でもあります。北海道食材の魅力と、それらの食材を使ったフレンチの楽しみ方について、当ホテルのフレンチレストラン「ギリガンズアイランド」の竹田光良シェフにお話を聞きました。
竹田シェフは静岡県出身。大阪あべの辻調理師専門学校を卒業後、地元静岡のフランス料理店をはじめ、東京都内のフランス料理店やホテルに勤務。2013年からギリガンズアイランドのシェフに着任し、北海道の食材を使った多彩な料理を次々と生み出しています。
まずは、夏場のフレンチ(2016年7月、取材時)に使われる旬の食材にどんなものがあるのか、竹田シェフに聞いてみました。
「例えば、魚介では時鮭、水ダコ、ウニといったものが出てきます。お肉は、牛肉のサーロインやほほ肉のほか、石狩市特産の望来豚(もうらいとん)も仕入れています。野菜は、契約農家の野菜を中心に、花ズッキーニ、コールラビ、ビーツ各種のほか、洞爺湖畔の農家から直接仕入れているトウモロコシも使いますよ」
©gontabunta – Fotolia.com https://jp.fotolia.com/id/115760921
食材の名前を聞くだけで美味しさに期待が高まりますね!
夏の観光地や直売所でおなじみのトウモロコシも、ブランマンジェ(材料をペースト状にして生クリーム、ゼラチンで仕上げたデザート)などさまざまな形で使われるそうです。
「旬の食材は次々と新しいものが登場してきます。例えば、ウニを一つとっても、6月あたりから順次各地で漁が解禁されるので、産地が変動して味も少しずつ変わっていきます。レストランのメニューも食材の移り変わりにより毎月変えていきますし、同じ季節でも年が変わればまた新しいアイデアが浮かび、常に新しいメニューを提供してレストランの味を進化させていっています」
食材が「旬」であれば、メニュー自体もその時の「旬」というわけです。宿泊したその時しか食べられないメニューに出会えるのも、旅の楽しみの一つになりそうですね。
ギリガンズアイランドでは、北海道食材をどのように使っているのでしょうか? いくつかのメニュー例とそのアレンジについて、竹田シェフに紹介してもらいました。
(注:取材時に紹介いただいたものです。季節・時期によってメニュー内容は変更されます)
時鮭のマリネ 2色のパプリカのムースリーヌ レモンとヨーグルトのアクセントラヴェンダーのフォーム 洞爺のエディブルフラワー
こちらは北海道の代表的な海の幸のひとつ、時鮭を使った料理。鮮やかな花びらが散りばめられた、華やかな盛り付けに目を奪われます。実はこの花びらも、安心して食べられる「エディブルフラワー」なのです。
「花を食べるのが初めてのお客様もいらっしゃいますから、塩(フルール・ド・セル)に花の色をつけて作ったカラフルな花の塩を添え、さらに花をマリネして作ったドレッシングを皿の底に忍ばせ、時鮭のマリネとともにサラダ仕立てにしています」と竹田シェフ。
この「花を食べる」という珍しい体験は、きっといつまでも旅の思い出として残るでしょうね。
マリネして軽く網焼きした北海道産時鮭と彩り野菜のゼリー寄せ 木苺のヴェネグレットとモレヴェール
こちらも時鮭の料理ですが、マリネにした上で網焼きするという、ちょっと変わったアレンジ。
「鮭のマリネそのままではちょっとパンチが足りないので、網焼きにすることで香ばしさを引き出し、主張と一体感を持たせています。味付けは木いちごのソースですが、部分的にバジルとコリアンダーで作ったソースも加えています(写真のソース、緑色の部分)」
鮭や他の食材をゼリーでまとめ、緑とオレンジのソースによる配色も美しい一品ですね。
松川鰈と帆立貝のセジィ サフランを効かせたヤマトシジミとパスティスのエミュルション
北海道の太平洋沿岸でとれる高級魚・松川鰈(かれい)と、北海道定番の帆立を使った料理。一般的なシジミよりひとまわり大きいヤマトシジミも添えられています。
「ヤマトシジミは栄養価も比較的高いものです。これを加えてダシをとり、味付けは、パスティス(リキュール酒)と生クリームにサフランを加えて香りをつけたソースを、泡立てて軽さを出しています」
暑い夏は人びとの食欲が減退する時期。重たいソースでの味付けを避けるという、食べていただくお客様への心遣いも感じられるアレンジです。
備長炭で炭火焼にした北海道産黒毛和牛サーロインのエスカロップ 熟成プレミアムメークインのピュレとグリーンアスパラガスのグリル
エスカロップというのは「薄切り」という意味。添えられたアスパラガスとメークィン(じゃがいも)のピュレも北海道の特産です。
「和牛サーロインは広くカットして、片面だけ炭火焼きしています。ソースは別のすじ肉から作ったソースを上からかけて、仕上げにレフォール(山わさび)を添えています」
山わさびも、冷涼な北海道での栽培に適した特産物。このひと皿であらゆる北海道食材が見事に調和しているのが感じられます。
北海道産和牛頬肉のブレゼ 十勝産プレミアムメークインのピュレ グリーンアスパラガスと初夏の野菜
こちらは和牛の頬肉を使った一品。ブレゼというのは「蒸し煮」という意味で、素材がかぶる程度の煮汁で煮込みます。
「お風呂に例えれば『半身浴』に近いでしょうか。こうして時間をかけて煮込むことで、肉の旨味が外に逃げず、食感もやわらかく仕上がります」
色とりどりのたくさんの野菜を添えていますが、ものによって調理法を変え、その一皿に合った火入れをしてバランスを取っていますね。
竹田シェフは、北海道の旬の食材の使い方について、次のように話しています。
「北海道の食の美味しさは、やはり食材の良さによるところが大きいので、全体的に大胆というか、あまり細かい手を加えずシンプルに仕上げた料理が多いですね。私たちも、広大な大地が育んだ食材の良さを最大限活かすために、手を加えるとしてもプラス1、あるいはプラス2くらいに収めるように心がけています」
素材の味をシンプルに引き出す――そのためには、新鮮で美味しい食材の流通が不可欠です。食材王国の北海道だからこそ可能なアレンジといえるでしょう。
続いて、食材の選び方について、竹田シェフにお話を聞きました。東京のレストランから北海道に来て、食材選びに変化はあったのでしょうか?
「農家の方や漁師さんなど生産者の方と直接連絡を取ったりするというのは、東京では経験したことがありませんでした。私たちスタッフもよく、畑でとれた野菜を受け取りに出かけています。北海道に来て驚いたのは、食材がほぼ『目の前』にあるということですね」
料理人として、生産者と直接顔を合わせる。そのなかで育まれた信頼関係も、より良い料理の創造に結びついていると竹田シェフは話します。
「お互いに信頼関係を築いていくなかで、より良い食材や珍しい食材を教えてくれたり、逆にこちらからリクエストしたものに応えてくれたりと、一緒に切磋琢磨して料理を進化させていくことができています。何より、自ら畑などに出かけていくことで、私たち自身が一つ一つの食材を大切にする気持ちを持つことができる。この点が非常に大きいと思います」
生産者とともに歩みながら創り出されるギリガンズアイランドの料理。お皿を彩る旬の食材一つ一つに料理人と生産者たちの思いが込められているのを想像すると、胸が熱くなりますね。
北海道の旬の食材をふんだんに使った料理を楽しめるギリガンズアイランドですが、レストランからの美しい景色もまた魅力の一つです。
「レストランは全面ガラスの開放的な空間で、洞爺湖の景色とともに料理を楽しむことができます。おいでになったお客様は、(特に要望がなければ)窓側の席からご案内するようにしています。特に、日没の時間帯は夕焼けがロマンチックですよ」
また、フレンチといえばワインと一緒に楽しむのも醍醐味の一つ。ギリガンズアイランドでは北海道産のワインも豊富に取り揃えています。
「北海道産のワインは、少し珍しい銘柄のものも揃えていますので、普段ワインを飲まない方も、当店では気軽に試される方が多いですね」と竹田シェフ。
最後に、ウィンザーホテルにおいでいただくお客様へのメッセージをお願いしました。
「夏は涼しく快適な北海道。レストランではそんな北の大地から生まれる食材を思う存分楽しんで、食事の後も北海道で心に残る良い旅をしていただけたら、私たちもとても嬉しいです」
フレンチの魅力の一つは、ひと皿ごとに「こんな食材があったのか!」「見慣れた食材なのに、こんな食べ方があったのか!」といった、新鮮な驚きや楽しさを感じられる点だと思います。大切な人と一緒に会話をはずませながら、北海道の旬の食材を思い出に残していっていただけたらと思います。
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